読書記録:『グラッサー博士の選択理論 幸せな人間関係を築くために』
リアリティ・セラピーの提唱者である、精神科医のウィリアム・グラッサー氏の本。
氏の著作の中でも気になってた「選択理論心理学」の本から、まずは読んでみる事に。
選択理論(Choice Theory)とは?
「すべての行動は自らの選択である」という考え方。
不幸は自分で選択している
重要なのは、我々がすべての行動を自分で選択しているという事。 つまり、不幸ですら自分で選択しているのだと。
ここで、思わず「エエッ?!」って言ってしまいたくなるような興味深い例をひとつ、本文から紹介します。
例)「私は鬱病に苦しんでいる」
実はコレ、選択理論心理学的には誤りである。
正しくは、「私は鬱行動を選んでいる」
…目から鱗ですよね!そんな訳あるかい!!ってこれだけ全力反論したくもなるような。
ただし、この衝撃的な考え方には素晴らしい点があるのです。
それがただの選択に過ぎない事に気づけば、不幸から自由になれるという事。
今本当にすべき事にフォーカスして、他の選択をすれば良いんです。それによって改善出来ると。
自分で鬱状態を選択してるって言われたら、普通は釈然としないものがあると思います。 けれど、何故そう言っているかを知れば、なんだかとっても明るくて力強くて優しい理論だなって思えてきてしまいました。
他にも虐待された子供の例が出てくるのですけど、その人が自分を不幸だと思う選択をしなければ、その人は不幸にならないと。
グッときちゃいますね、こういうの。
被った不条理や傷(過去の事実)はどうもならないけど、あなたの価値には疵はついていないんだと言ってくれてるみたいで。
こういう能動的な心理学実践法、なんだかアドラー心理学を思い出さずにはいられないなあ。
ちなみに、グラッサー博士は「不幸の多くは人間関係」と言い、アドラーは「全ての悩みは対人関係だ」と言いました。
やっぱり他人だな。それがいつだって悩みの種なんだ。
宇宙に自分1人だけだったら、悩みってほぼ無くなりそうですものね。
人間の5つの基本的な欲求
曰く、私たちは生まれながらに5つの欲求を持っていると。
- 生存
- 愛、愛のあるセックス、所属
- 力(パワー)
- 自由
- 楽しみ
これら5つは、人によってバランスが違います。
例えば私で言えば、「自由の欲求」と「楽しみの欲求」 がブッチ切りで強くて(笑)、他はかなり少なそうか、普通かなと思います。
束縛を何よりも嫌い、基本的に1人で延々とオタクしてますね。かつては1人でフェリー乗って、シャンパン傾けてた私ですし😂 気ままな一人旅を愛してるし。
このバランスが似てる人とだと、付き合いやすいというのがあるようですね。面白い〜。
ちなみに、勝間和代さんもそのバランスだそうです。
だからこそ、勝間さんの様々な思想に共感するのかなあと納得(そもそも選択理論を知ったのも勝間さんの影響)
5つの欲求の特徴
①生存の欲求
人生の初期から自覚する欲求。
②愛、愛のあるセックス、所属の欲求
友情や愛情、家族などの人との繋がりの欲求。
③力(パワー)の欲求 人間特有の、力の為の力の欲求。
④自由の欲求
誰からも所有されない状態を求める欲求。
長期的な親しい人間関係で困難があり、最も苦しむのは婚姻関係だそうです(笑)
ちなみに、自由欲求の高い同士のカップルは超大変だそうです。お察しだ…。
⑤楽しみの欲求
学習に対する欲求。
学習をする事で、人間は生存に有利さをもたらしてきたのです。なので、学習行為を欲するよう遺伝子に組み込まれたと。ほほー。
そして、人間は生涯遊ぶ唯一の生き物だからこそ、学ぶのだとも。
遊びと学習の関係性ってよく言われますもんね。実際これは本当に効率が良い。
楽しくなきゃ、ガンガン学べないですし。
現実世界と上質世界
私たちが現実と呼んでいる世界がありますよね。
しかし、この現実の見方が人それぞれなのもまた事実。
なぜそのような事が起きるのか?
キーワードは、各人が持つ上質世界というものの存在。
これが凄く面白い考え方なんですよね。選択理論心理学で、個人的に1番感心した点です。
さて、その上質世界とは何か。 これは、生まれてから死ぬまでに創造し続ける個人的世界の事であり、5つの基本的欲求を満たす具体的なイメージ写真により成り立ちます。
この「イメージ写真」というとは3つの領域に分けられます。
- 私たちが共に居たいと思う人
- 私たちが最も所有、経験したいと思うもの
- 私たちの行動の多くを支配している考え、信条
これらの領域に属する人、事、モノ、信条…などなどにより、私たちの中に固有の「心のアルバム」が形成されます。
上質世界とはこれを指すものなのです。
このように、人間は上質世界をふまえて自分が見たいと思うやり方で、現実を知覚します。
つまり、自分の上質世界にあるものには関心をはらうのに対し、そうでないものには無関心になります。
例えば私で言えば、超!食い意地が張ってますから(笑)、「食」は完全に上質世界にデカデカと鎮座してますね。「心のアルバム」の表紙を飾ってるかもしれません。
一方で、食べ物なんて腹が満たされればこだわりは無いという人も居ます。そういう人は、上質世界に「食」が無い。
このように、上質世界がそれぞれ全く異なるからこそ、同じ現実を前にしても、別の見方をしているのです。
『バカの壁』の脳内一次方程式のような話だなあ。
気分が良いという状態
こういう時は、現実世界が上質世界寄りになっていってるんですね。
自分が気分を良くする為の選択をし、上質世界に近づけていけるって能動性が良いなあ。
人との関係を今より良くする為に
その為に重要なのは、
- 相手の上質世界に何が入っているかを学び、支持する
- 自分の上質世界を説明し、相手に自分が恐れている事について話す
これら2つを行ない、信頼関係を育むのが大事だとグラッサー博士は言います。
私たちが唯一コントロール出来るもの
それは、自分の行動のみ。
例えば、親が子供を勉強しろと叱りつけ、言うことを聞かなければ罰を与えたり。
例えば、企業のトップが従業員を所有した気になって好き勝手に扱ったり。
そういう他人をコントロールするような従来の心理学を、グラッサー博士は「外的コントロール心理学」と称して、批判します。
人間関係や幸福論の本を読んでいると、やっぱりこういう他人への敬意と自分を大切にする事(本著になぞらえて言えば、自分の欲求を満たすこと)に終始するんだなあという感想。
時間によって価値が篩にかけられた古典を読んでいても、やはりこのような"I'm ok,you're ok. "的な考え方が多い。
社会的動物であるホモ・サピエンスの世界における、普遍的な事実なんでしょうか。
実は全部読み切れないままに図書館の返却期限来ちゃったので、また折を見てトライしたいなーと思います。
大変興味深い一冊でした!